民間療法

ドブ掃除という力仕事を久しぶりにしたせいで、腰に激痛が走る。
ぎこちない動きに気づいた同僚が、
「どうした?」
と声を掛けてくる。


「腰が痛い・・・」
と、まるで爺さんのようなセリフを吐く俺。


「アーユルベーダの軟膏を塗れば良くなるよ」
という、いつも通りの返答を予想していた俺に対して、
返ってきた言葉は、まるで違った。








「ニンニクを煮て、それをかじりながら煮た汁を飲むと良いよ」








「・・・?」








想像するだけで不味そうな、その液体は薬なのか?
しかし、何事もチャレンジしてみなければ気が済まないたちなので、
早速、向かいの店に行ってオーダーすることに。
もちろん、そんなメニューがあるはずもなく、
わざわざ作ってもらったのがコレ。


材料は、ニンニクと水のみ。
茶色いのは、素焼きの鍋から滲みでてきた色です。


匂いは、まさにニンニクを煮た匂い。
ちょっと怖いが勇気を出して一口すする。


「・・・・・・・ん?」


なんと、シンプルな加工法からは想像も出来ないほど豊かな香り・・・ということは当たり前ながら無く、ニンニクの煮汁そのもの。
我慢して全てを飲み干すと、わんこ蕎麦状態でおかわりが・・・。
見ると、ティーカップ3〜4杯ほどの在庫がそこに・・・。
途中からは砂糖の差し入れがあり、手のひらに乗せた砂糖を舐めながら汁をすすり、時たまニンニクをかじるという苦行を続けること30分。
痛みが緩和することは無かったが、体が温まり、ついでにお口も臭くなった。


ニンニクの煮汁自体に効能が有るのならば、塩とか胡椒とかコンソメとか入れて、スープ仕立てにしても良いのではないか・・・?


そんな愚痴とも文句ともつかぬ独り言をつぶやきながら、口の臭さに顔をしかめる帰り道でした。