アルピコでの出会い

買い物袋を忘れてきたので、アルピコ(スーパーマーケット)へ取りに行きました。


タマゴを買い忘れていたので、それも購入。
さっぱりしたものが食べたかったのでクイッティアオでも作ろうと思い、豚のミンチも購入。
そこでヴェッダの人と遭遇した。


田舎だと気になりませんが、大きなスーパーマーケットに上半身ハダカの人がいると、流石に目立つ。
ヴェッダというのはスリランカ先住民族の事。
この、「ヴェッダ」という言葉自体は「狩猟民」という意味で、侮蔑語として分類されている。
実際には普通に使われている名称ですが、彼らの自称は「ワンニヤラアレット(森の民)」となる。


そこの長老のような方。
威厳はあるけれど、にこやかで印象が良い。
私が豚肉を計量してもらっている横で、店員に質問していた。
「それはチョコレートか?」
店員は応える。
「いいえ、牛レバーです」






なかなか強烈なやりとりでした。




そんな会話に我慢できず横目で彼を見ていると、私の視線に気づいたのか、こちらを見てくる。
私にしてみれば町中でワンニヤラアレットの人を見るのは珍しいけれど、逆に彼らにしてみれば東洋人を見るのは珍しいのかもしれない。
視線が交差し、お互いに微笑む。
良い時間です。


面白かったのは、彼らの腰にぶら下がる手斧。
スーパーとしても、万引きを警戒して買い物袋を預かるような態勢なのに、彼らの手斧は預からない。
あとで妻に聞いたら、彼らにとって手斧は成人男性の正装の一部とのことで、それを取り上げることは出来ないそうです。
なので、飛行機に乗る時もそのまま搭乗するとかしないとか。


毎年、仏歯寺にハチミツを奉納するのは、彼らの役目。
しかも大統領に次いで二番目に執り行われる。
日本でのアイヌのように、事実上彼らの独自言語は消滅しているけれど、スリランカとして彼らの文化を尊重しているのは見て取れる。
アイヌといえば、北海道には地名としてその名残りが見て取れますが、スリランカで言えば州の名前に残っています。


『サバラガムワ』
これは彼らの言葉で「サバラ」が狩猟民、「ガムワ」が地域を意味する。
今ではこの地域に居住者は居ないようですが、かつては大きな集落が有ったのかもしれません。
実際、この州にあるスリーパーダという山は、彼ら本来のアニミズム山岳信仰の対象になっている。


アイヌアメリカ先住民、アボリジニマオリ
彼らと同様に、いわゆる末裔たちが居留地や保護区域で観光客を相手に生計を立てるのが現在の状況のようです。
もちろん、ほそぼそと狩猟採集生活を営んでいるのでしょうが、先細りの一途です。
保護するのが良いのか、同化するのが良いのか。


実際にはシンハラ人との混血も進み、あと数世代で同化してしまうことが予想されている。
大和民族と同化したアイヌと同じ道ですね。