仏教解説(デーワーレ)

昨日の続き。


日本における信仰の対象は昨日の部分で終わり。


で、スリランカではどうなっているかというと、基本的には仏陀のみ。
ここで言う仏陀とは「釈迦仏」のこと。
バラモン教から独立して今の仏教を生み出した存在です。


大乗仏教上座部仏教の違いは、大雑把に言ってコレがメイン。
信仰の対象がごちゃごちゃと入り乱れているのが大乗仏教で、お釈迦様だけというのが上座部仏教
多くのネットや本でも、そう書いてある。


でも、実はそうとも言い切れない。


上座部仏教の大本であるスリランカでも、大乗仏教と同じようにバラモンの神々や現地で信仰されていた土着の神が取り込まれている。
シヴァ、ヴィシュヌ、パールヴァティー、パッティニなんかはヒンドゥーから。
シヴァとパールヴァティーは夫婦ですね。
パールヴァティーはカーリーと同一です。
カーリーは、以前書いたけど「シヴァを踏んづけてしまった女神」です。
二人の子供としてガネーシャ(ガナ)がいます。
もう一人の子供はスカンダ(日本では韋駄天)です。
このスカンダとスリランカ土着のカタラガマは同一だとされています。
カタラガマは「なんでも願いを叶えてくれる神様」として有名。


もう、ややこしいでしょ?


ヒンドゥー教が色濃く出てくると、血縁関係とかが複雑になるし、時代や地域によって続柄が滅茶苦茶。
しかも、「ダレとソレは、実は同じ神様なんですよ」とか勝手な解釈がそこらじゅうに出てきて、混乱必至。


パッティニはマンゴーから産まれたとかなんとか。
なんにしても、スリランカでは重要視される女神で、健康や多産の女神として信仰されている。
我々夫婦も行かねばな。


で、ヒンドゥー起源の神様にはもう一人、ナータも居る。
ナータの細かいことは、実はよく分かっていない。
古い神様を起源に持つようですが、一説にはバラモン最高神ブラフマー、シヴァ、ヴィシュヌのアバターだとか、誰ソレの子供だとか、色々。
また、「姿かたちを持たないもの」と言う意味を持つらしく、それが転じて千変万化する存在とされた。
大乗仏教で千変万化といえば、観自在菩薩(観音様)です。
で、さらに混乱することに、千変万化するからこそ、上記の神様は全てナータ起源であるという人も居る。
もう、意味不明。
さらに言わせてもらうと、純粋な仏教から産まれた神だた言ってる人も居る。
これは、怪しいと思うけどね。


スリランカ土着と思われるのは、前述のカタラガマ(スカンダと同化)、サマン、デディヌンダとかですかね。
サマンは山の神様。
スリーパーダなんかの山岳信仰が起源。
デディヌンダはヴィシュヌの側近とか代理。
キャンディ王朝と関わりが深く、衣装はキャンディアンです。




こんな感じで、ざっと見ましたけど、書いてても混乱します。


キャンディの仏教の中心とも言える「仏歯寺」。
その敷地内にも、シヴァ、パッティニ、ナータ、カーリーのデーワーレが置かれていますし、我々も仏歯寺に行くときはこれらを必ず廻ります。
つまり、スリランカ仏教徒からすると、「ヒンドゥー教起源の神様が变化または同化して、仏教およびスリランカの守護神となっている」という感じ。
なので、デーワーレに行くこと自体で、「スリランカ仏教徒神仏習合だ」とは言い切れない。


ですがそこを踏み越えて、これらの守護神を「お釈迦様とは無関係の、一人の神様」として見ている場合がスリランカでは多い。
なので、ヒンドゥー教の寺院であるコービラまで出向いて、ガナ(ガネーシャ)とかカーリーに祈祷をするわけです。


輪廻からの解脱や心の平安はお寺(仏教)で。
現世利益はデーワーレ(守護神)で。
困ったことや大きなお願いが有れば、コービラ(ヒンドゥー教)で。


意外と無節操ですな。