米の上限価格撤廃

9月の頭だったでしょうか?
砂糖と同時に米の小売価格上限が改定された。
その時は値段が数パーセント上がったのかな?


消費者は思いました。
コロナで収入が激減しているのに政府の価格統制は厳しくなるばかりだと。
でも生産者はもっと深刻な状態でした。


スリランカは決められた15の品目において価格操作をしている。
これは過剰な価格設定を防いで市民生活の安定化を図る事を目的としています。
15品目は以下の通り。
粉乳
LPG
小麦粉
セメント
鶏肉
砂糖
唐辛子
玉ねぎ
紫小玉ねぎ
レンズ豆
乾燥小魚
ひよこ豆
緑豆

魚缶詰


この品目の中で、基本的に自給できているのは米のみ。
海外からの輸入はしてましたが、一部の高級米のみ。
つまり外国からの輸入価格の影響を受けずに政府が独自に価格設定できるのは米だけでした。
スリランカで一番重要な食品の価格を決定できるというのは強い力。
しかし、化学肥料や除草剤の使用を禁止し、以前に一時的とは言えコロナ禍で米の売価を下げたことで農家は米の作付けを放棄。
ワタシも勘違いしてたのですが、売価が改定されて値下げになっても補助金とか出ないらしいです。
小売価格が下げられたというのは政府の買取価格も下げられるって事らしく、そりゃぁ農家さんは怒るわな。


で、恐らくは米が不足すると判断したのでしょう。
自給できていた米を今後は輸入せねばならず、どこまで価格が高騰するか分からないため、政府統制のリストから外して自由化したのだと思います。
これに伴って10万トンの緊急輸入を実施するとのことで、一応は不足に備えてのストックに廻すと言っている。
10万トンねぇ。
以前にも書きましたが、スリランカは結構お米を食べます。
個人消費量は世界3位。
一人当たり月に9キロの米を消費する。
年間で9キロ×12ヶ月=108キロ。
国全体で108キロ×2000万人=216万トン。
これはセンサスデパートメントの統計と似通ってるので大体はこんなもんでしょう。
ちなみにそこのデータでは年間消費量を200〜230万トンとしています。
10万トンは年間消費量の4.6%。
つまり17日分の消費量です。
緊急ストックとして充分なのかどうかは不明です。


もう一つ言うと
その10万トンのお米は化学肥料や除草剤フリーで栽培したものなのでしょうか?


さらにかつて日本で起きた「平成の米騒動」からも判る通り、主食にしているものに対して人間の味覚というのは非常に鋭敏。
当時の日本人がタイ米に悪戦苦闘したように、スリランカ人も外国米に苦労する事でしょう。
一部の高級米ならいざ知らず、普通米を外国産に転換して口に合うかどうか。


続報
上のニュースは昨日の夜に発表されたものですが、今日になって大手の米販売業者が新たな販売価格を発表した。
ナードゥという種類の普通米を例にとると、先日までの政府統制価格は1キロあたり
小売価格 95ルピー
買付価格 55ルピー
だったものが
小売価格 115ルピー
買付価格 62.5ルピー
となりました。
小売価格は21%(20ルピー)上昇ですが買付価格は14%弱(7.5ルピー)の上昇に留まる。
販売業者の利幅は40ルピーから52.5ルピーになり31%も増えた。
これで米の作付けが増えるのか?
販売業者は最終利益を伸ばせるのか?
米の輸入業者は多少の業績アップが期待できるかもしれないが、ドルの流出は抑えられない。
誰にとって得のあった決定だったのでしょうか?