この三日間、禁煙は続いている。
とりあえずの口寂しさを紛らわすために、日本でならガムを噛むところだろう。
しかし、ここはスリランカ。
美味しいガムを知らないので、手当たり次第にガムやアメを舐めるのだが、
それを見て嫁さんが一言。
「アーユルベーダのマウスウォッシュを作ってあげようか?」
正直なところ、アーユルベーダに対してあまり信用を置いていない私。
症状にあわせた有効成分を油で抽出して、大抵の外傷にはその油を用いるという、
そのゴリ押しのパワー自体には面白さを感じるものの、
ガンや脳の問題にも手術なしで対応するのには疑問を感じざるを得ない。
しかし予防的側面や美容、リラクゼーションといった分野では、
それなりに興味がある。
幾つかのシンハラ語をメモに書き付けて、渡してきた嫁さん。
それを持ってアーユルベーダの薬局へ走る俺。
干からびた何かのタネらしきものを手に入れ、家に戻る。
さらに包丁を持って、例の泉に向かう我々。
髪に良いと言われている木の根っこを少しだけ削って持ち帰る。
口臭にも効くのね。
あとはクローブを少し。
全部で5種類の原材料ではあるが、どれも茶色い物質であるため、
見分けはつかない。
手のひらにこんもりと盛られた茶色い物質を石臼でつぶし、鍋に。
コップ8杯分の水を加えて煎じる。
これがコップ一杯分まで煮詰められたら完成。
出来上がったのは、想像通り茶色い液体。
味も、想像通り渋い汁。
良薬口に苦しの言葉が正しいのなら、効果は絶大だと思われる。