締め出される

新隊員さんへのオリエンテーションを終え、任地に帰る。
幹線道路の分岐点でバスを降りて、乗り継ぎバスを待つ。
すると知り合いのスリーウィルの運ちゃんが
「俺も帰るから、乗っていけ」と誘ってくれた。
ラッキー!!


家の前まで送ってもらい、バイバイ。
ゲートを見ると、鍵がきっちりとかけられている。
近所のおばさんに聞くと、
「みんなで出かけたよ」


さて、困った。
俺は鍵を持っていない。
「どうしよう・・・」
すかさずオバちゃん
「乗り越えれば〜」


そりゃあ、そうなんだけど。
でも柵を乗り越えたところで、どっちにしろ玄関の鍵も無いし・・・。


しかし、迷っている暇は無い。
このオバちゃんたちが帰宅してからでは、通行人に泥棒だと疑われる。
速攻で乗り越えて敷地内に侵入。
外のシャワーで汗を流し、タバコを一服・・・。
帰ってくるのを待ちながら、バルコニーで本を読む。
柵を乗り越えていることを考慮に入れると、まるで居直り強盗のようだが、それはそれで優雅な一時か・・・。
数カ月ぶりの雨は降るし、次第に暗くなってきて本も読めないし、蚊の大群に襲われるし・・・。
優雅な一時ねぇ・・・。
メールしたり電話したり、のんびり時間を過ごす。
それはそれで、やっぱり優雅な一時か・・・。
携帯のバッテリーが無くなって、電源が落ちる。
優雅・・・?


久しぶりの雨で気温が下がり、バルコニーに居たのでは肌寒い。
手持ちの服を見ても、半袖ばかり。
さて、どうするか・・・。


しかしその時、俺の視界にあるモノが・・・。
スリランカ庶民の足、スリーウィル。
いや、庶民にはちょっと高いか。
庶民はバスだな。
やり直し・・・。
スリランカ庶民よりちょっとアッパークラスの足、スリーウィル。
・・・語呂が悪い。
まあ、とにかくうちの家には自家用のスリーウィルがあるのです。


そうだ!!
スリーウィルで寝よう。


あの後部座席なら、快適なナイトライフが送れるぜ!!
左右の雨よけを垂らせば、蚊の侵入も遮れる。
体型によっては、四人でも座れるサイズだし、小さくなれば横にもなれる。
なんといっても、あの座席は柔らかい。


いや〜なんとかなるもんだね(泣)。


結局、スリーウィルで夜をあかす決意をした五分後に、家族が帰宅。
事なきを得たわけです。
3時間の地味な戦いは、こうして幕を閉じた。