膝に置いた荷物

スリランカではバスの席に座っている人間が、通路に立っている人間の荷物を預かるシーンが良く見られる。スリランカ流の優しさというかマナーというか、そのあたり日本より素晴らしい。席も当たり前のように譲るし。
今日の仕事帰りのバス。左側の一番前の通路側に座った私。そこしか空いてなかったので座ったのですが、となりの窓側の男がクサイ。申し訳ないけど、尋常じゃなく魚臭いのだ。恐らくマーケットで働いているのだろうが、それ自体は良い。ただ、仕事終わりにシャワー浴びたり、着替えたり出来んもんかね?自分の服が臭くなるのも嫌なので、かなり通路側にはみ出す格好で座っていた。
途中でその男は降りていったのですが、その頃にはバスは超満員で、通路にはみ出して座る必要も無くなったので、男の代わりに座ったお婆さんと密着しつつ、家に向かう。
通路側に立っていた二人の女の子。十代後半か二十代前半の姉妹のようだ。手提げカバンを小脇に抱えていたので、それを私が預かった。膝の上に載せてすぐ、カバンから電子音が聞こえてきた。彼女に電話がかかってきたのだ。この場合スリランカ人は、私の膝の上に載ったカバンへ手を伸ばし、私の膝の上でゴソゴソとカバン内を探し、電話だけを引っ張りだして会話を始める。終わるとまたカバン内に電話を戻し、もとの体勢に戻る。
彼氏からなのか、親からなのか何度も電話が掛かり、その度にこの行動が繰り返された。何度目だろうか?また電話が掛かってきたのだけれど、姉妹での会話に夢中で、その呼び出し音に気づかない。
カバンに耳を寄せて、間違いなく呼び出し音が鳴っていることを確認して、彼女の顔を見上げる。そして電話が鳴っていることを知らせると、120点の照れ笑いを見せてくれた後、カバンのポケットに手を伸ばした。
なんだかホッコリしたバスのひと時でした。