利益分配

大きな話題になってますね。
吉本興業の話です。


本質の話は「反社会勢力と知らずに営業を行い、その報酬を受けていたにも関わらず嘘をついた」という事。
コンプライアンスの観点から言えば、会社をクビになったとしても文句は言えない状況だと思う。
その裏に会社からの圧力や、利益分配の不満、古くからの慣習などがあるだけで、それは社内で解決すべき問題。
ただ、テレビ局が吉本興業の株主になっているという構造は不健全な気がするし、吉本自体が反社会勢力からスポンサー料を受け取っていた可能性については追求するべきかと思う。


まぁ、そのあたりは置いといて、話題になっている従業員(芸人さん)との利益配分について考えてみた。


以前、日本で営業の仕事をしていた頃の話。
その会社では、低めに設定された(生活は可能なレベルの)基本給と、自身で売った分の営業利益の10%という、二本柱の給与体系が設定されていた。
100万円分を売り上げたとしたら、粗利で数%。
そのまた10%が受け取れるので、数千円の連動収入という感じですね。
勤続数十年のベテランやり手社員とかの場合は売上高が大きいので、莫大な収入が望めると思っていたが、そうではなかった。
あるベテランさんは、昔からの常連で他社に鞍替えしないと予想される販売先の数量は、査定から除外されていた。
また、新たに売り込みを必要としない(全ての仕入れ物品を我が社から購入している)販売先は、新人がルート営業する事にして、その利益の一部を新人に付けていた。
こんな感じに臨機応変な対応をした結果、新人でも生活が出来るレベルで給与を手にする事ができるし、ベテランさんも年収で1000万を超えるレベルの収入が期待できた。
給与としては上手く行っている感じでしたが、仕事としてはどうか?
ベテラン先輩社員の営業先にルートで廻らないとならないので、自分の営業活動の時間が制限されるのはデメリットの一つかな。
先輩のお客さんですから、気疲れするし。
でも、仕事を覚えるにはいい経験になるのも事実だし、僅かとは言え「おこぼれ」にも与れる。


総じて、うまく廻っていると感じていました。


これを吉本興業の6000人で廻すとしたら、どうでしょう?
月に一回ほどしか仕事がないような芸人さんに、生活できるかどうかギリギリの収入を保障。
仕事で入った収入は折半。
仕事が定期的にあるけれど、単価の安い芸人さんにも、同じ条件で良いでしょう。
テレビでちょこちょこ見るようなレベルになって、仕事の単価があがってきたら芸人さんの取り分を4割に再設定。
ほんとの売れっ子芸人さんになったら3割でオファー。
彼らが会社と若手を支えていく構造ですね。


3割の分配に不満を持つ人気芸人さんも出るでしょう。
そうであれば、独立なり移籍なりは自由。
しかし、その場合は移籍金のようなものを設定する必要があるかもですね。
前年の、その芸人さん単体での売り上げをベースに「○年分」とか?


個人で取ってきた仕事は、税務処理とかを吉本に依頼する形にして事務手数料を払う形にすれば良い。
そうすれば反社会勢力が関わってくるリスクも、ある程度は管理できるし、脱税問題もクリア。
芸人さんのモチベーションや収入も維持できる。


これで、吉本側が無制限に芸人を受け入れる事も出来なくなるだろう。
売り上げの振るわない芸人を解雇できるという事であれば、芸人さんも「最低限の生活は出来るし・・・」という状態を続けていくことは出来なくなる。
バイトに明け暮れてネタが作れないなんていう本末転倒な状態も改善できる。


今の時代、これぐらいのことは可能だろうし、やらないと「ブラック」と言われるでしょうね。
ただ、個人事業主の集合体のような吉本興業でこれが出来るかは別の話。
厳しい下積み時代のネタが、芸人さんの十八番になっている事実もある。
「こんな(生活を保障した)制度にして、面白い芸人が育つのか?」という疑問も確かにある。


この数十年で、様々な業界で制度改革が行なわれてきた。
それぞれの立場によって「改善」なのか「改悪」なのかの判断は分かれることでしょう。
芸能の分野でも、遅まきながら制度改革の波が起き始めたという事かもしれない。


以上、机上の空論でした。