警察での調停

朝4時のバスに乗り込んでネゴンボに向かう。
目的の警察署に着いたのは08:45。


来訪の事情を伝えると、「今、内部の講習会をしているので二時間ぐらい待ってもらうと思います」と言われた。
09:00に来いと言っておいて、この対応。
不穏な空気を感じます。


相手側も09:15ぐらいに到着。
二時間待つということを向こうも聞いたんでしょうね。
帰って行きました。


で、11時過ぎ。
ぞろぞろと会議室から出てきた警察官ら。
そこでペラデニヤのSIに電話する。
「会議が終わったので、これから調停に入ります」


「じゃぁ、こっちから電話しとくから」とSI。


すぐに固定電話が鳴り、受付の警官を通じてOICに伝言してもらうという形で連絡を入れたようだ。


OICは伝言を聞くと顔をしかめる。


「こっちは親切心で、荷物を持ってきたほうがシンプルで良いと伝えたのに、この日本人は荷物を持って来ていない。しかも他所のSIが電話してくるなんて、オカシイだろ!!」


嫌な予感的中。
でも、筋違いなことをやったのはここの警察署が最初。
我々の主張も聞かずに一方的に荷物を持って来いとか、到底受け入れられない。


で、入室を許可された我々は、さっそく主張を展開。


1.要求されている物品2つは、不要だからといって我々に手渡したもの
2.貸出という言葉は一度も使われていない
3.向こうの車で運び込んだものを、返却時には車を使わせないという仕打ちにあったこと
4.必要ならネゴンボの我が家に人を送って取りにこさせることも出来たのに、しなかったこと
5.我々も実際には不要ではあったが、くれるというモノを断る理由が無かったこと
6.キャンディに持って行ったことで運搬費用を負担しているのはコチラだということ


以上を主張。
でも、OICの機嫌は悪く、「返せ」の一点張り。


OK。
返すのは問題ない。
我々も家で場所を取るだけで、不要ですから。
ただ、運搬が問題。
仕事でネゴンボに滞在していたわけで、そのことに対して貸し出したと主張してくるのならば、回収するのも向こうの手間賃でするべき。


「そこは相手側と交渉しよう」
準備して練ってきた理論ですから、綻びはない。
OICもそこを理解してくれたようで、少しだけ我々の話を聞いてくれるようにはなってきた。


さらに付け加える。
「返すのは問題無いですが、これから先、色々とイチャモンを付けられるのは困る。盗難しても居ないモノを返せと主張してくる輩ですから、現金とかを要求されたりしかねない。なので、今後は何も要求しないしクレームも一切しないというレターが欲しい」


「向こうも、そんな馬鹿な事はしないでしょうから、受取証だけで済ませよう」と言われた。




で、相手側を呼び出す。


やってきた相手。
部屋に入るなり「ビッグプロブレムだ!!」と手に持ったレターを机に叩きつける。
それを一瞥したOICは、そっと差し返す。
OIC「これは受け取れない」
なにやら我々に対する新たなクレームのようだ。


この時点で、OICは我々が主張していた彼らの性質が嘘では無いと感じ始めたようだ。


その差し返したクレームは無視され、品物二点の返却に関して話をすすめる。
OIC「彼らは返却に応じている、問題は返却方法だ」
そこで、一応聞いておくか、と言った感じで相手側のスーパーバイザーに事情を確認しだした。
スーパーバイザーは私達が主張したこととほぼ同じ状況を説明。
結果として我々の主張を担保してくれた。


OIC、もうこっちよりに傾いてます。


で、ネゴンボからスリーウィールをハイヤーして、我が家までモノを取りに寄越して、支払いは半分ずつにするということで合意。
これを渋々承知した元上司。
この問題に関してはこれ以上抵抗出来ないと感じたのか、机の上の書類を指差して「This one? This one?」と繰り返す。
差し返されたクレームだ。
イラッとしながらもOICは我々に質問してきた。
「奥さんが彼に電話して、『ビザを停止してやる』と脅したと書いてあるけど、ホント?」


見ると、拙い英語でそう主張してあった。
で、元上司が言う「ジャパン エンバシー ミー コール ミー プロブレム ビザ」
良く分かりませんが、まるごと嘘であることは理解した。


妻が言う。
「サー、全部嘘です。電話なんてしたこと無いですし、そんなの着信履歴でも見れば解ります」
で、妻は直接元上司に言った。
「Don't tell lies」


「SHUT UUUUUUUUUUUUUUP!!!!」
妻が言い終わる前に元上司は激昂して大声を張り上げた。


馬鹿です。
こんな馬鹿、見たことないです。
警察署でそんなことをすれば、どうなるか分からないのでしょうか?


案の定、OICにこっぴどく叱られる元上司。
「次に同じことをしたら、外国人だろうが関係ない。身柄を拘束する!!」


これで、OICは完全にコチラ側に付いた。
今までは元上司に気を使って英語で話していたOICですが、以降はシンハラ語のみ。
我々が主張していた、今後の迷惑行為を防止するためのレターも作成してサインしろと相手に通告。


ほぼ、我々の完全勝利が確定しました。


あぁ、書くの疲れてきた。


部屋を出されて、双方で内容確認の書類作成をしている間に、妻がOICの部屋に呼ばれる。
どうでも良い世間話だったようですが、妻に対しては「ミス」と呼び、元上司には「アラカ」と言う。
「アラカ」って、物とか犬とかに使う代名詞で、「あれ」とかそんな感じ。
「ミスの旦那さん、ホントにシンハラ語が上手なので、コチラは大助かりです。アラカなんて、英語もほとんど出来ないから、実際クレームを受け付けるときにも手間が掛かって仕方ないんですよ」なんてことも話しした模様。


書類作成が終わって、私もその会話に加わる。
「ビサの件ですが、向こうが私に言った内容ですよ。スリランカに居られないようにしてやるって言うのは。それに、日本大使館が電話してきたとか完全に嘘ですよ。スリランカのビザを発給してるのはイミグレであって、日本大使館では無いですから。我々も嫌がらせするならイミグレに電話しますよ」


そのことに気づいたOIC。
スーパーバイザーを呼びつけて
「あなた達は嘘のクレームを頻繁に出して警察の仕事を妨害している。今後一切のクレームは受け付けない。再度、何かクレームでも持ち込んできたら、、、解るよね?」と言ってくれた。




おしまい。