英語での授業

数日にわたってスリランカの移民や出稼ぎに付いて書きましたが、今日は少し日本のことも。


日本語を話せない状態で日本に行って事務職を希望するスリランカ人には「ちょ、待てよ」と、キムタク的な思いを抱いてしまいますが、海外に住む「外国最高、日本クソ」という一部の人たちの間では、たびたびある問題提議が為される。
それは「義務教育の英語化」です。
あまりにも英語が話せない日本人を在外日本人が嘆き節で言う奴です。


実際、日本人は英語下手なんでしょうけど、ワタシからすると一旦住めばなんとかなってる人が殆どだと思う。
この主張をする人は、恐らく英語がお上手なのか、もしくは上手だと思ってる人なのでしょう。
週に数回の授業では英語が上達してないのだから、国語以外の授業を英語でやれば良いという主張。


バカである。
この考えに至っている事こそが、英語しかやってこなかった故の弊害、発想の貧困化を物語っている。


まずはこの主張のデメリットを幾つか。
単純に小学校入学までの英語レベルが低いことによるドロップアウトが大量に発生します。
だって英語が出来ないと算数理解できないって、算数は得意だけど英語は苦手って子供には厳しいよ。
あとは英語を勉強する時間が別に必要になる(多くなる)ことで他教科の学習時間が減る。
時間は有限ですから。
一番削られるのは日本語ですかね。
これによって母国語が貧弱化し、教育関連の言葉は英語、生活は日本語という現象が生まれる。
家で学校の話を子供から聞くと「今日はMathのClass中に○○君がEarly-LunchをしてTeacherがvery angry」的な事になりかねない。
実に美しい日本語です。
世代間での溝も出来るでしょうね。
だって家に居る子供がルー大柴状態だったら会話したくないでしょ。


もっと色々あるけど、一旦ストップ。
ワタシのような主張に対して「そんなのは過渡期における問題であって、そのうち解消出来る」という人も居るけど、解消した時には家庭での会話も英語になっていないと問題が多い。
国語の授業と日常で会話すること以外、授業や学校で使う単語は全部英語に置き換わるのよ?
その時は国全体がルー大柴
ルー大柴王国、ここに爆誕


まぁデメリットは置いといて、高等教育を母国語で受けられるメリットを、やはり強調しておきたい。
わかり易い例で言うと、ノーベル賞の自然科学分野において母国語で高等教育を受けられない国の人は極端に少ない。
いわゆる開発途上国での受賞は平和賞と文学賞が多数。
ヨーロッパの一部地域では例外もあるけれど、あちらはEUという有機体を形作る上での方針ですから、英語を身につけるためにやった政策ではない。
とにかく、論理的思考をする上で語彙の豊かさというのは欠かせない要素ですから。
物の状態や現象、感情なんかは言語化されて初めて理論化出来る。


あと、こういったテーマでは海外で英語が話せないことのデメリットばかりが話題になってしまうのですが、日本が英語化される事のデメリットもある。


いわゆるガラパゴス
外国の人が日本に惹かれる理由は、向こうとは異なる文化背景があるからでしょ?


それを敢えて捨てるには「英語上達の為に」なんて言う海外志向の一部の日本人にしか響かない理由では弱すぎる。
日本というのは、英語が高いレベルで使用出来る状態でなくても問題なく一生を送ることが出来る国なのですから、それを維持するための方法が必要。
それは「義務教育の英語化」ではない。


スリランカでは大学の理系は英語教育です。
高校までシンハラ語だったのに、いきなり英語。
なのでやはりレベルが低い。
我々が高校でやることを大学で教える。
教える方も英語話者ではない。
授業だけ英語ですから、人によってはそれほど上手でもない。
誰も得しないですよ。
お医者さんが患者さんに病状とか処置方法を説明するのにもシンハラ語の似たような単語を使うか、そもそもシンハラ語にない言葉とかもある。
そうなると医師は伝える事を諦めるし、説明しようとして伝わらないと患者を馬鹿にする事すら起きる。
医者と患者の絶対的な上下関係が出来てしまう。


全世代の国民が高いレベルで理解できる言葉は必要なんです。
そのためには初等教育から高等教育までの一貫した教育システムが重要なのであって、英語上達のためには英語教育の改定で済む話。


色々と言ってますが現状で150万人近い日本人が海外でなんとかやってる訳で、その全員が流暢な英語が話せているとは限らない。
それはそう。
それでも生活できるし、決して流暢なレベルで話せることが重要とも思わない。
あと「英語化」って言うとこにも偏った考えが透けて見える。
なぜ英語である必要があるのですか?
そういった人に限って西欧かぶれで「ダイバーシティは大切」とか言ってそうじゃないですか?
まぁこれは完全な偏見ですが。