大統領が州議会選挙に言及

インドの外務大臣スリランカに来ていました。
コロナの状況下、なぜこのタイミングで?と多くの人が思ったようです。
しかし、大きなインパクトを残してくれました。


外相は「憲法修正第13条の完全実施と州議会選挙の実施」を求めました。
憲法修正第13条というのは、もともとは1964年に交わされたインド・セイロン協定に端を発しています。
これは端的に言えば「スリランカ在住インド出身者に対する地位協定」です。
これ以前はインドから強制的に連れて来られた労働者及びその子孫はスリランカ人とは認められていなかったのです。
その後に何度かの改定が為され、1987年にインド・スリランカ和平協定が今も効力を持った形でスリランカ憲法に記載されており、それが憲法修正第13条。
これによってインドの外相が求めるのは地方議会選挙の実施です。


インド出身者の子孫、つまりタミル人と考えて大きな齟齬は無い。
彼らがスリランカ人として認められた事で獲得した選挙権を行使できずに居ることに問題提起をしているのです。
1987年に交わされたインド・スリランカ和平協定では地方への権限移譲に言及しており、東部州や北部州などのタミル人多数派地域での自治権を拡大し内戦を終結に向かわせようという意図がインドとスリランカの両国にあったのです。
そしてスリランカ初の州議会選挙が1988年に実施された。
ここにスリランカ地方自治の歴史が始まった訳です。
それまでは中央集権。
タミル人多数派地域に中央政府からシンハラ人管理官が送られてた訳です。


ここまで良いですかね?


で、1988年に実施された時には北部州と東部州は一つの州とされており、現在の9州では無く8州で実施された。
というか、当時の大統領が地方議会選挙の前に合併させたんですけどね。
その後に2007年まで勝手な宣言に基づいた合併状態が続き、やっと分割された訳ですが、その翌年の2008年になってやっと北部州と東部州での議会選挙が実施されました。
その間、合併して出来た北東部州という自治体で選挙が実施されたことは一度もありません。
つまり、1988年から20年間に亘って選挙が実施されなかった。
ちなみに任期は5年です。
5年経過した1993年から15年間は中央政府から代理が送り込まれ、自治は機能していなかった。
一応、その他の州では実施されてます。


問題はタミル人だけの話では終わらない。
2008年(もしくは2009年)にそれぞれ全ての州で実施された議会選挙の次。
2012から2014年に実施された選挙を最後にスリランカでは州議会選挙が実施されていない。
キャンディの属するセントラル州では2012年以来9年。
他の州でも少なくとも7年。


個人的な話でいうと、妻の就職が遅くなったのもこれが原因の一つ。
地方の学校の教職などでは州議会に権限があり、州議会が存在しない事で試験などの実施が為されずチャンスが無い。
中央政府の管轄する学校では採用が全国に及び、勤務地が選べないので却下。
別のチャンスに恵まれて今では農水省で働いてますので、結果オーライですが。


話を戻すと、大統領はインド外相との会談の後、早期の選挙実施を発表した。
外圧が無いと地方議会選挙もやらないんですか?
これ、中央政府のパワーはシンハラ人が握っているのに、タミル人地域では逆転してしまい捻れが発生する事を嫌がっている事が理由でしょうね。
北部、東部、そして伝統的に現与党とは水が合わないセントラル。


大統領は会見で
汚職と詐欺は容認されず、すべての役人は人々の利益のために働くべきである」
とも発言した。


当たり前の事のように思えますが、それをわざわざ言わなければならないって事は、今はこの状態に無いって事ですね。


なんにせよ、中央集権、ラージャパクサ一族集権をなんとかしないと、国の再建のスタートラインにも立てません。