考察:卵の値下げ

鶏卵の生産者組合は「卵の売価が下がり、経営を直撃する」と声明を発表。
なら、売価を上げれば?と思ったのですが、それが難しい。
どうも売り残りが発生して在庫が積み上がっているらしいのです。


一個当たり16~18ルピーほどだった鶏卵は年末から22ルピーに値上げされていた。
スーパーとかだと34ルピーとかしてました。
これは餌代の上昇に伴うコスト増から来ているのですが、スリランカ国内の小麦売価の上昇で、パンや軽食の販売数量が低迷。
それに使用されていた鶏卵も引きずられて低迷。
在庫増。
売価の値下げって事らしい。
18ルピーぐらいに下げられるとの事ですから、コスト増を吸収できないですね。


生活必需品の値上がりで、相対的に必須ではない惣菜パンの売上が落ちて、そこに使われている卵が売れないし、単独でも値上げされた卵を買い控えする主婦も多かったのでしょう。


このままでは生活必需品以外の商品は、軒並み在庫を抱える流れになりそうです。
元々スリランカの一般的な生活では、収入の殆どを消費する事になり、預金出来るような状態には無い。
コロンボなんかでは月に60,000ルピーほどが平均月収だと言われて久しいですが、他の都市との乖離は大きい。
地方では40,000ルピーそこそこでしょう。
しかもこれは平均値であり、中央値では無いのでね。
中央値ではそれぞれ45,000と30,000そこそこでしょう。
この収入のほぼ全てを使わなければ生活できないのが実情。
ローンを組んでいる場合は、もっと厳しいでしょうね。


今も医療セクターの従事者が賃金の値上げを求めてストライキをしている。
これは政府との間で合意されたベースアップが履行されていない事が原因。
無い袖は振れないと言うのが政府の主張のようですが、なら何故合意してしまったのか?
ワタシの妻も公務員で、この1月から正規雇用になった。
一年のトレーニング期間を設定されたのですが、2020年3月からの雇用としてサインした契約書を、政府側がコロナを理由に2020年9月からに変更。
外出禁止令の無い時期は仕事をしていたにも関わらずトレーニング期間を勝手に延長されたのです。
レーニング中は給与は半額なんでね。
政府の狙いはそこにあったのでしょう。
本来なら2021年3月で正規雇用になるところ、2021年9月になったのですが、そこでも何故か延期。
ユニオン側がストライキを予告して、なんとか2022年1月からで合意。
一年のトレーニング期間を政府の勝手な都合で一年九ヶ月にされたわけです。
そして、情けないことに正規雇用最初の給与は払われてません。
スリランカの労働法では賃金支払いは「一ヶ月を超えてはならない」と定められています。
実際には一週間の期間雇用の場合は終了日から三日以内などの細かい規定があるのですが、どの場合も一ヶ月を超える事はできない。
政府は「2ヶ月ごとに給与の支払いをする」とか言ってるらしいですけど、これが普通の人にはキツイ。
上でも書きましたけど、生活費に丸々収入を充てている人には、給料日が一ヶ月遅れるって死活問題ですよ。
労働者とすれば、一ヶ月の間で受け取れなかった給与に対する利子も受け取れず、場合によっては短期で融資を受けなければならず、その利子の支払いも増える。
ローンの支払いが遅れれば、遅延損害金を支払う事にもなる。
厳しい生活がさらに厳しくなる。


医療従事者に限らず、公務員や準公務員のベースアップも履行されてないので、ここは有言実行でお願いしたいところですね。
例えば40,000ルピーの月収で月の生活費に39,000ルピーが消えるとする。
自由に使えるのは1,000ルピーだけ。
これを45,000ルピーの月収に増額すると、収入は1.125倍。
倍率で見るとなんか少なく感じますが、実際のところ自由になるお金は1,000ルピーから6,000ルピーに増えるので6倍です。


こんなにも簡単に、しかも一方的に契約を破棄してしまう国。
日本のプロジェクトでも何度もやられてます。
契約書が意味を為さないのですから、自衛するしか生きる道は無い。
なんとか考えて生活費を抑え、余剰資金を捻出して金融商品を買うなり、預金するなり。


スリランカの公務員は恩給制度があるので、多くの公務員は収入の全てを使い切る。
リタイヤしても、リタイヤ前の半年間における平均給与の八割だか九割が貰えるし、死亡した場合は遺族が受け取れる。
なので安心して使い切るのでしょう。
これだけ政府が契約不履行とかマニュフェスト撤回とかしてるのに「恩給だけは大丈夫」と考えてる神経が疑問。


契約は反故にされると理解すべきだし、インフレがここまで進むと、引退時には充分だった恩給額は数年で生活費として不足する。


やはり自衛は必要です。