やるべきことは他にあるのですが、スリランカの普通の人の生活がどれほど苦しくなっているかを知るための材料を集めたり、作ったりしている。
2003年のデータしかなかったのですが、スリランカ人の一般家庭で、どのように支出をしているかの項目別シェアをまずはお見せします。
食費 37.9%
衣類 8.3%
住居 10.7%
医療 3.4%
教育 3.0%
交通 8.8%
光熱費 4.4%
耐久消費財 8.9%
利払い 1.5%
その他 13.1%
全体収入の4割近くを食糧費に充ててます。
また、利払いがあるということは貯蓄に全く回せていないという事。
食費37.9%のうちで、最も大きいのが「米」の6.9%になっている。
2003年の米の価格はキロあたり40ルピー。
私が協力隊として活動していた2009年で75ルピー。
2022年の今は、226ルピー。
その期間の世帯収入平均は
2003年 15,400ルピー
2009年 36,451ルピー
2022年 76,414ルピー
(これはパンデミックで所得が悪化する前、つまりもっとも所得が多かった時期の推計値)
2003年のアイテム別の食費シェアから、それぞれの購入量を逆算し、家族で一ヶ月にどれほどの食材が必要なのか求めた。
そこから、現在の物価で購入した場合の金額が以下。
ただし、外食費や細かい購入物品を抜いた。
米、小麦、パン、肉、スパイス、ココナッツ、粉乳、砂糖のみ。
2003年 3,078ルピー
2009年 6,468ルピー
2022年 32,545ルピー
主要項目で見ると2003年は支出の37.9%が食費で、メイン食材はそのうち19.9%。
2009年 17.7%
2022年 42.6%
驚くべき数字です。
2003年から食べるもの、食べる量をまったく変更していなかったとして、メインの食材を購入するために費やす費用の割合が、19.9%から42.6%になっている。
最低限生きていくだけでこれですから。
当時と生活様式は変わり、車やバイクを持つ人も増えた。
それに伴うローンや燃料代、携帯の普及による月賦や通信費、、、。
しかも、これは中央銀行が出している数字なのですが、使っている収入データは平均値。
中央値ならもっと少ないし、下位40%の平均世帯収入は27000ルピーほど(つまり下位40%で中央値を出したらもっと低くなる)。
2022年の今、下位40%は2003年当時に平均的な家庭が普通に食べていた水準の食事は口にすることができないのです。
World Food Programme (WFP) 世界食糧計画はスリランカの22%が食糧危機に陥っていると報告した。
また、86%の人が食事の量を減らす、栄養価の低いものに変更する、完全に食事を抜く、の少なくてもいずれか一つの手段で食費を減らしているという調査結果も出た。
毎日買っていた商品が値上がりすれば、別の商品にシフトするというのは、なにも経済危機のスリランカに限ったことではなく、日本の一般消費者もスーパーで同じ行動をとる。
なので、これは少し歪んだ数字のような気もしますが、日本と違うのは選択肢が無い場合もあるということ。
たとえば、いつも買っていた商品が値上がりしたから別のものにシフトするのが日本など。
スリランカは、いつもの商品が無い。
そして、別の商品を買おうとするが安かったはずのモノがいつもの商品より高くなっているか、元々高かったモノがさらに値上がりしているか。
値上がりしたから安い商品にシフトしたけど、こちらも値上がりしているから以前とあまり変わらないって事(日本の状況)でもないんです。
安い商品にシフトしても、以前購入していた比較的質のいいもの以上の値段になっている。
そして、ある程度余裕のある家庭は金利上昇で恩恵を受けて、物価上昇をカバーできている場合もある。
先日、大臣に就任することとなったダンミカ・ペレイラの率いるLB Fainanceという金融機関で見てみると、一年の定期で金利が20.75%。
倍になるのに41ヶ月(三年と5ヶ月)。
ちなみに、72の法則(72÷福利金利で、複利運用した場合に何年で倍になるかがわかる)で計算してもきっちり計算してもほぼ同じでした。
比較的高い金利でも72の法則が機能するのは、やはり便利ですね。
それでもインフレの影響で一年のうちに名目所得が40%も減損したスリランカでは、決して充分とは言えない。
我が家も物価上昇の影響で、妻の稼ぎでは生活できない。
一応、公務員なんですよ妻は。
うちでは基本的な生活費は妻が出し、その他の支出(ワタシの嗜好品、電化製品、旅行、外食、妻の学費、医療費などなど)はワタシが出すことになっている。
最近の食卓には卵すら出ない。
なので昨日ワタシが買いに行きました。
妻は収入の中でやり繰りしようと頑張ってくれていますが、それだと野菜とドライフィッシュばかりになりますので。
幸いといいますか、我が家はローンも無いですし、ワタシの蓄えもありますので、最近の生活にも悲壮感はありません。
「このままじゃ困っちゃうね」というぐらい。
ですが、一般のスリランカ人には厳しい。
韓国ですらアジア通貨危機のデフォルトで支援を受けたIMFに全額返済するのに4年必要だった。
スリランカは当時の韓国より経済的基盤がある訳でもなく、IMFが厳しい措置を課してくるのは明白。
国の規模が小さい分、うまく機能すれば奇跡的復活の目も無いことは無い?
今月末にはIMFの対応の細かい部分が決まると思いますが、外国へ出稼ぎに出てしまった人材は帰ってこない。
早いうちに復活のビジョンを提示しないと、経済を回復させるための労働力すら底をつくのではと心配になる。