国有企業の売却

IMFスリランカ政府の財政再建を手助けするにあたって、国有企業(半官半民を含む)の売却に手を付けた。

 

良いことです。

 

公務員と民間企業のイイトコ取りをしているとの批判も国内に多くあり、正直言ってサービスの質も悪いのでね。

 

その企業リストは以下の通り。

スリランカ航空は、もっとも槍玉にあがる国有企業。

海外の航空会社から出資を受けていたのですが、その株式が売却されるにあたってスリランカ政府が買い戻しを行ない、国有企業としての立場を取るようになった。

正直サービスは悪いし、国有企業だったことで政治家の私的使用が多く取り沙汰され、国民人気も低い。

「世界一暇な空港」という称号を獲得したマッタラ・ラージャパクシャ国際空港も、ラージャパク者が退陣した後に売却。

売るのは良いのですが、買い手がつくのかが問題。

テロとコロナで低迷した旅客数は順調に回復してきているようですが、今後の成長具合によるって感じですかね。

 

スリランカテレコムはドコモ的な立場ですかね。

これも一時期問題になりましたね。

トップの年俸が1000万ルピーを超えるというのに、それは政府の任命によって行われるため、数多くの贈収賄疑惑が持たれている会社。

公式な政治家の給与の10倍以上ですからね。

参入障壁の高い寡占市場ですので順調に利益は伸ばしているのですが、如何せん、半官半民なのでコネ入社が多く、利益が消費者や株主(マレーシアの通信会社が第二位の大株主)に還元されていないという問題が指摘されています。

 

スリランカ保険公社

これもスリランカ最大の保険会社で、結局のところここが業界のスタンダードになる。

一度は民間に売却されたのですが、そのプロセスに不透明な部分が多くあり無効とされて現在に至る。

リストに有るランカホスピタルのオーナー会社でもある。

 

キャンウィルホールディングス(グランドハイアットコロンボ)は怪しさ満点。

グランドハイアットは資金不足を理由に2014年ごろからずっとOpening Soon になっている。

ここに出資しているのは、このCanwillと上記保険公社、EPF(年金公社)、そしてリストにも有るリトロガス。

どうゆう契約になっているか知らんけど、10年前から建設中っていう現場では利益は上がってこないわけですから経費が嵩むばかり。

そこになんらかのマネロン的な仕組みでもあるのではと個人的には疑っています。

結果的には未稼働の10年中、4年はテロとコロナで観光業は振るわなかった訳ですから、開業してなくてよかったとも言えますが。

 

ホテルディベロッパーズランカ(ヒルトンコロンボ

ヒルトンのライセンスを使用して経営しています。

元々はヒルトンコロンボを立ち上げる際に作られた管理会社が起源なんですかね?

そのヒルトンも三井物産の関連でやられてますが、この元会社もLanka Japan Hotelsという会社でした。

政府経営のホテルとか、なんか不思議な気がしますけど。

他所でも有ることですかね?

あと、この管理会社のオフィスとかねぇ、、、。

いい場所にあるんですよね。

そう言った部分でも不明な点は多い。

 

リトロガス。

元々は水道ガス関連の公社でしたが、それをシェルに売り、また買い戻した感じ。

プロパンガスの占有率は85%とも言われているし、親会社はスリランカに2つしか無いガソリン販売会社の一つであるセイペトコなので、エネルギー関連でいうと巨大企業。

つまりセイペトコも政府系の会社です。

 

ランカホスピタル。

元はインド系のアポロホスピタル。

それを保険公社が購入。

その際に、役員としてラージャパクシャ一族が入り込み、色々と黒い噂も絶えなかった時期があり、今ではスリランカでも最大手の病院。

 

最後のランカホスピタルやテレコムの件でも分かりますが、何が問題かって言うと、役員の任命が不透明なこと。

そこには大統領の親族が任命されることが多いし、破格の給料に加え、政府が交代するたびに新たに任命され、そのたびに退職金などが支払われるとか。

天下りの受け皿になってるんですね。

クリーンななイメージでマヒンダ・ラージャパクシャを破って大統領に就任したマイトリパーラですが、結局は力がなくて政治的混乱を持ち込みましたが、最終的にはクリーンですら無くなり、彼の弟がテレコムの会長に就任していたってこともあった。

政府系の会社の良くないところはそこです。

ラージャパクシャの一族は航空関係の会社も持っていますが、それだってスリランカエアラインからの何かしらの援助や協定がなければ無理だと思う。

 

今回のリストには載ってませんが、テレビ局も同じ構図。

繰り返しになるけれどラージャパクシャ系のテレビ制作会社もあります。

 

こうした不正や疑惑、富の集中の源泉となっているのが政府系企業。

 

本来なら公的サービスの一翼として政府系の企業があってもいいと思うのです。

水道が民間に売却される流れの日本はちょっと怖いし、利益を追求しないことで国民の生活に安価なサービスを提供できるっていうのはメリットではある。

しかし、スリランカの場合は国民に利益が還元されることはなく、既得権益保全と、利益のピンハネ、サービスの低下、という駄目な国営企業の見本のようになっている。

 

この国有企業という財産を外資に安く買い叩かれないようにするのは今後の課題だし、販売プロセスの透明化も必要かと思うけれど、そこはIMFには期待できないのよね。

IMFが来たことで経済は立ち直ったけれど、その結果として利益は海外に流出してしまい国民生活はそれほど安定しない。

そんな国にはなってほしくない。