紅茶染め

昨日の生産者訪問不発のあと、実はせっかくだからこの町を見て歩こうという事になった。小さな町だがとても美しい景色で、俺たちのささくれた心を癒してくれそうだった。町の中心部に登山道の案内らしき看板と、紅茶工場の案内があったので、とりあえずそっちに向かって歩く。

これが町の中心




400mほどで紅茶工場へ。
ここは以前訪問した紅茶工場と同じ系列だが、観光地化されておらず、門扉も締め切られていた。外から声を掛けて工場の見学をしたいと申し入れると、マネージャーが自ら案内してくれた。
工場内部は前回訪問した所と同じような造りで、目新しい事はない。しかし俺たちの目的は規格外の茶葉を譲ってもらうこと。商品にならないような品質の茶葉を捨てているなら、それを譲り受けて紅茶染めの原料にしたいと考えていたのだ。話を始めると茶葉で捨てる部分は無いと言われた。どんなに品質が悪くてもある程度の基準を満たしているためランク付けが可能で、製品として流通しているらしいのだ。床に落ちた葉っぱも掃き集めて堆肥にするということ。う〜ん、なかなかうまいこと行かないな。色々と話しを聞いていると、マネージャーがあるものを見せてくれた。


最低ランクの茶葉。というか繊維?葉脈かな?
これも一応製品だと言う。メーカーはこれを買い取って粉砕し、インスタントの原料にするらしい。一キロあたり23ルピー程。全部はさばけないので残ったものは堆肥に回すらしい。
「これだったら、ただであげるよ」
「えっ!? ほんとに!? でも商品でしょ?」
「別に大丈夫」
これで色が出るのかどうか疑問ではあったが、試す価値はあると判断しもらうことに。
「どれぐらい居るの? 10キロぐらい?」
「いやいや、そんなにたくさんは要らない。でも、五キロぐらいあると嬉しいかな」
「OK」


そして五キロの繊維は抱えて持たないとダメな位の体積。
「欲しかったらいつでも来てね。いくらでもあるから」
「ありがと〜」
流石に申し訳なくなって、紅茶でも買ってかえろうかと言うことになり、
「ここで紅茶って買えるの?」
「ああ、ちょっと待ってね」
一番安いのでも買おうかなと考えていたら、外箱に入れられていないビニール包装丸出しの茶葉を持ってきて、
「あげるから、持っていきな」
「・・・ぎゅ〜(俺がマネージャーに抱きつく音)」


生産者にあえなくてCPに対してむかついていた俺たちの心が、完全に癒された瞬間でした。


安い紅茶でも買って、申し訳ない気持ちを表わしてお茶を濁そう(紅茶だけに!ね)としていた俺たちに、マネージャーは完璧なホスピタリティーで対応してくれた。もしうまく染色できたら、彼らに仕事の成果を見せにいこう。