どうすれば良かったのか

まずはコレを読んで欲しい。


簡単に言うと包丁が無くなった話。
その包丁が見つかった(と俺は思っている)。


自分の持っている包丁は浅井丸勝作「V金10号ダマスカス包丁」。
表面にダマスカス鋼特有の波状紋が浮き出ている。
とりあえず、現時点では一般的な包丁ではないし、
入手経路もインターネットのみ。


そのペティナイフが無くなったのだ。


それを大家の家で見つけてしまった。


まるで心臓をブスリと刺されたよう。


「これ俺の包丁だよね」とはもちろん言えず、気付かれないようにこっそりと持ち出した。
今考えれば、コレが良くなかった(ある意味、泥棒だしね)。
その時の俺の気持ちは、余計な波風を立てて問題を大きくするより、
俺がこっそりと持ち帰って、この問題は無かった事にしたほうが良いと思ったのだ。
その後、大家が家を訪ねてくる。
「家の包丁が無くなったから、貸して」


これはとても不思議なことに思えた。
だって俺の包丁を盗っておいて、また借りに来るなんて。
ペティナイフではなく、牛刀の方を見せて
「これでイイ?」
すると、
「野菜切るから、小さいのある?」


そこで、何かがハジけた。
「小さいの有るけど、俺のだよ。見る?」
そこで、先程の包丁を見せる。


「これ、私たちのだよね?」
おいおい。


大きい包丁と並べて見せる。


世間で一般的でないダマスカス鋼の包丁で、
同じシリーズ製品で、
作者が同じで、
日本でしか売ってなくて、
10ヶ月前に無くなったのと同じ物が、
遙か遠くのスリランカの、
となりの大家の台所で見つかる確率ってどれくらい?


韓国からの帰国の際に成田空港でスリランカ人の友人にもらったんだと。
9000円近くする包丁ですよ。
三年前に持って帰ってきて、ずっと使っているらしい。
でも、ペティナイフが無くなって以来10ヶ月前から使っている牛刀より
グリップが綺麗ですね。
ま、使い方を知らないランカ人により刃こぼれは凄まじいけど。


ま、それは置いといて、
「コレはセットでしか買えないけれど、もう一本は?」
「あーもう一本有ったけど、友達にあげた」


どうすればいいんだ。
セットでしか買えないなんて嘘なんだよ。
それに対してこの説明。
疑惑は深まるばかり。


俺「じゃあ、この包丁を挙げた人に連絡とってもらえる?」
家主「それは出来ない。プレゼントしたものに対して確認の電話するなんて無理」
俺「まだ使ってるかどうかだけでも聞いてみてよ」
家主「そんな文化はスリランカにはない」
俺「お互いすっきりしないし、聞けば解決するじゃん!!」
家主「だったら、もうお前が持って行け」
俺「なんで?ただ、俺はこんな奇跡的な状況が信じられないんだよ」
家主「だから、もうイイ。俺達は泥棒はしない」
俺「俺だってそう思いたいよ。だから電話すれば解決するじゃん」
家主「もういい、俺達はお前の電気料金だって払ってるのに信用できないのか」
俺「ちょっと待てよ。何の話だよ」
家主「見ろ、今月だって400ルピー払ってるんだ。なのに文句言ったことないぞ」
俺「おい、お前聞いてないのか?家賃に上乗せして毎月1000ルピー払ってるぞ」
家主「そんな話は知らない。もういい、姑の見舞いに行かなくちゃならなくて忙しいから、もうこの話は終わりだ」
俺「わかった、じゃあ明日もう一回話そう」
家主「なんで話す必要があるんだ?もう終わりでいい」
俺「じゃあ、どうするんだよ。二人とも自分のものだって言ってるのに」
家主「お前が自分のものだと思うなら、それでいい。おわりだ」




まあ、こんな感じの会話。
韓国の帰りに成田で友人にもらったという証拠にパスポートを見せられても、
それでは何の証拠にもならない。


おれの中にも、宝くじ以上の確率の低さながら、
「もしかして、彼らの言い分も本当なのかも知れない・・・」
という疑念がある。










と、ここまで書いていて思い出した。
この包丁を買った時、あまりの嬉しさに包丁ケースを自作したのだ。
その時に撮影した写真が、外付けハードディスクにあるはず。


あー確認するの怖いなぁ。
でも、自分の身の潔白は晴らさねば。



これが、2009年6月29日に撮影した物。


同じサイズでトリミングして、並べてみる。
ついでに白黒逆転して、模様を浮き出させると






決定的です。
普通の包丁ならいざしらず、ダマスカス鋼というのは、
一本一本の波紋が全て異なる。
性質の違う金属を何重にも重ねて打ち伸ばすので、同じ文様は作りようが無いのだ。


あー悲しすぎる・・・。
今思えば、9000円の包丁なんて無視すれば良かったのかもしれない。
でも、自分にはまったく非がないという主張っぷりが、
今更ながらに不可解だ。
それと、あまりにも予想通りの刃こぼれ具合が、どうしても許せなかった。
「誰か知らないけど、どっちみちランカ人には砥げないし、ステンレスの包丁みたいに無茶な使い方してるだろうから、勿体無いな」
って思ってた通り。
この包丁は大事に使えば一生使えるのに。



はぁ、どうすれば良かったのか。