オマーンでの人身売買

スリランカから海外に働きに出る手段は、それほど多くはない。

なんせ世界で必要とされる技術を持つ人は少ないのですから。

 

大学や院を出た人の場合、多くはオーストラリアなどに出稼ぎを希望する。

比較的スリランカから近く、長年に渡るスリランカ移民のコミュニティーもあり収入の大幅な増加が見込めるから。

医師の場合はイギリスへの出稼ぎも多い。

コモンウェルス共通の医師資格を利用して、そのまま医療行為が出来るから便利。

 

でなければ、運転手や現場労働者として中東に行くか、メイドとして同じく中東に行くか。

 

政府機関が窓口として存在しているが、中東の顧客とメイド候補をつなぐブローカーも多く存在する。

 

もちろん、ブローカーを通じて政府機関への登録も必要なのですが、過去に起きた中東でのメイドに対する人権侵害事件を契機にメイドの年齢下限設定があったり、最低限の学歴を課していたりと、その規定に達しない人にとっては面倒な制度。

そこで、出てくるのが闇のブローカー。

顧客とメイドを直接つなぎ、多めのマージンを取ることで政府への届け出無しでメイドを送り出す。

ビザは観光ビザであることも往々にしてある。

最終的には円満に就労期間を終了し、オーバーステイとなって帰国。

スリランカの法に触れる行為ではないので、帰国後は普通に生活できるし、もう一度海外に出稼ぎに行きたい場合は姉妹のパスポートで挑戦したりもする。

法律を守って行きていくという感覚は無い。

 

そこに付け込もうとするのが、さらにたちの悪いブローカー。

観光ビザでメイド候補を送り込み、到着後にパスポートを取り上げてオークションに出す。

パスポートではなく人間の方です。

セックスワーカーとしてであったり、メイド兼セックスワーカーであったり。

 

悲しい話はまだまだ続く。

 

これらの被害者が運良く逃げ出して在オマーンスリランカ大使館に逃げ込んでも、そこで待ち受けているのは、保護の見返りとして性的な行為を要求する大使館職員。

これは外交官パスポートをキャンセルされてスリランカ本国に送還されているという事実からも、かなり信憑性は高い情報。

もちろん起訴されてませんけどね。

 

これが海外で不法滞在している人たちの現実。

正当な滞在資格がないっていうのは、逃げ込む場所が無いってこと。

海外で最後に頼りとなる場所は大使館だと考える人も多いですが、個人的なことには関与しないのが大使館の立場です。

今回紹介したケースのようなひどい対応は日本大使館では起きるはずもありませんが、不法滞在している人間と公的立場で職務を執行している人間との間では、こういった非人道的なやりとりが起きることがある。

実際、オマーンで性的行為を要求されたメイドさんは、要求に応えなければオマーンの警察に通報すると脅されていた。

 

 

日本人にも碌でもない人はいる、当たり前です。

スリランカ人にも素晴らしい人はいる。

これも当たり前。

 

ただ厳然たる事実として、くだらない欲望や目先の利益に転ぶ人の割合が圧倒的に日本よりも多いのが途上国の実情。

 

倉廩満ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る

 

これは「衣食足りて礼節を知る」という短いバージョンで知られている管仲の言葉です。

穀物倉庫が満ちて初めて人間は礼節を弁えるようになり、衣食が充分と成ったときに名誉や恥辱といったものを考えるようになるという意味ですね。

本当にそう思います。

日本の警察が世界に比べて優秀なのは、日本人の持ち前の気質や教育、道徳観といったものが根本にはあっても、結局は充分な俸給といった部分に尽きる。

もちろん新聞沙汰になって社会的に死んでしまうことの怖さもあるでしょうけれど、その前のブレーキとして食を失うことで今の収入がなくなってしまうことの怖さも大きいと思う。

 

スリランカの警察官や国家公務員では、上級職にならなければ家や車を持つのは難しい。

なのに、大きな権力を与えられてしまうため、市民はへりくだって対応する。

そこに魔が差す。

 

ワタシも何度か警察の下っ端と飲むことがあったけれど、支払いは100%ワタシ。

なにかお願いしたところで、超絶縦社会のスリランカ警察では上に意見を通すことも不可能だし、無駄な出費だった。

その警察を紹介してくれた知り合いがワタシの金で飲みたかったのだろうというのが、あとになって理解したところ。

 

汚職警官へは厳しい懲罰。

もっと警官を減らして、一人あたりの収入を増やす。

このあたりからスリランカ汚職体質を改善していかないと。

 

ワタシがボランティアで働いていたとき、30代の女性が期間限定の転勤みたいな形でやってきた。

何も知らないワタシは普通に話をしていたのですが、よくよく聞くと他所で横領して飛ばされてきたのだとか。

その時は思わず聞いちゃったよね、「え?ここって刑務所なの?」って。

 

 

日本では考えられない嫌がらせの原因が嫉妬だったりすると、宗教ってなんだろうって思ってしまう。

海外が素晴らしいとか、日本が最高とかって事ではなくて、一度全く違う環境に身を置くってことはぼんやりとした自分の価値観を砕いてくれたり、逆に確固たるものにしてくれたりするので、妻にもこれからの日本生活で思いっきり色々と考えてほしい。

まぁ彼女はホンワカ気質なんで、あまり劇的な変化や葛藤のようなものは怒らないかも知れませんが。