テルダーラってなんですか?

例えば日本にあるスリランカ料理店で、もしくはネットのレシピ検索で、この【テルダーラ】というものを目にすることが在る。

いんげん豆のテルダーラ。

じゃがいものテルダーラ。

 

なんですか、それ?

 

検索の一番上に出てきたサイトには「テルダーラ”とは「油炒め」を指します」と書いてあった。

他のサイトでは「スリランカの油炒めのこと」ってなってました。

 

 

 

 

いや、言いませんけど。

 

 

言わんとすることは解ります。

テル=油

ダーラ=「入れる・加える」の活用で「入れて・加えて」の意

ですのでね。

 

恐らくですが、こんな勘違いが起きた理由は推測できる。

例えば、スリランカに行ってジャガイモの炒めものを食べて、「この料理はどうやって作ったんですか?」とでも聞いたのでしょう。

で、答えが「アラ ワラタ テル ダーラ ヘドゥワ」。

アラ=ジャガイモ

ワラタ=~に

テル=油

ダーラ=入れて

ヘドゥワ=作った

つまり、「ジャガイモを炒めたものだよ」って感じ。

 

この文章、たとえば「チキンカリー ヘドゥワ」みたいにメニュー名を入れて「チキンカレー作ったよ」という風にも言える。

チキンカリー ヘドゥワ

アラ ワラタ テル ダーラ ヘドゥワ

 

シンハラ語の理解が不十分な場合、アラ ワラタ テル ダーラの部分がメニュー名だと解釈する可能性がある。

しかし、これは「ジャガイモを油で」のような不完全な文章にしかならない。

さらに「テルダーラ」で検索して出てきたジャガイモの油炒めは「アラ・テルダーラ」とされており、これはさらに単語の不足が起きている。

語感的に「プリンアラモード」みたいで口の馴染みが良いんでしょうけど、そもそもテルダーラという言葉は単体で使えないし、そんなメニュー名は無い。

 

アラ・テル・ダーラだと構造的には、【「ジャガイモ油」(という謎の油)を入れて】みたいな感じ。

ヌーベルキュイジーヌとかでやる「季節の果物で作ったソースを添えて」的な手法でしょうか?

それでも「ジャガイモ油」という謎の油しか出てこないので、せめてメインの食材を教えて欲しいという気持ちになる。

 

スリランカの料理には名前のないものが多い。

というのも、全てはカリーだと考えてほぼ間違いなくて、先述のジャガイモの油炒めも正しく言うなら「ジャガイモに油を入れて(炒めて)作ったカレー」となる。

全部がカレーだからこそ、カレーという部分は省略されがち。

「ジャガイモに油を入れて(炒めて)作ったカレー」が、

「ジャガイモに油を入れて(炒めて)作ったもの」になる。

もしくは「ジャガイモカレー」だったり、最終的には素材名だけの「ジャガイモ」になったりする。

それで充分。

だって全部カレーだから。

 

では、何というのが正解なのか。

ジャガイモの炒めものであれば「アラ ベダプワ」ぐらいではないでしょうか。

もしくは「アラ べドゥマ」かな。

こちらは書き言葉ですね。

 

 

別のサイトでは「ブロッコリーの炒め煮」に対して「テルダーラと呼ばれたりマルンと呼ばれたりします」と書かれている。

もう一度書くけれど、テルダーラという名前のものは存在しない。

マルンはメッルンだと思うけれど、これを同列に扱うこともできない。

メッルンは料理名だし、テルダーラは「油を入れて」という調理工程。

なので油を入れないで作るメッルンもある。

 

なぜ、こんなにも「テルダーラ」という謎の料理名が独り歩きしてしまっているのか不思議ですが、恐らくはスリランカカレーの料理本が原因かなとは思ってます。

 

そこに出てくるのがテルダーラだったりキラタだったりする。

キラタというのは赤唐辛子ではなく青唐辛子を使って作る料理のことを指しますが、本来の意味は「キリ ラサタ」であり、日本語に直すと「ココナッツミルクの味に(味で)」という感じ。

赤唐辛子の場合は「ミリサタ」で、「ミリス ラサタ」つまり(唐辛子の味で)という事になる。

これも料理名という感じではなく、仕上げ方の手法。

全く使わないかと言われるとそんな事はないのですが、会話の流れで使うイメージですね。

「今日のおかずは?」と子供がお母さんに聞く。

「パリップよ」と答えるお母さん。

「今日は辛くして欲しいな」

「じゃぁミリサタ ハダン ナン(赤唐辛子を入れて作るね)」

 

こうゆう使い方が一般的ではないでしょうか。

 

 

この本の執筆者にしても、スリランカの誰かから習って名付けをしているのでしょうから、もしかしたら無理やり名前をつけたスリランカ人がスタートなのかもしれない。

レシピを分類するには名前が必要ですからね。

 

言葉というのは変化するものですし、スリランカに来てお店で「アラ テルダーラ デンナコ」で通じるとは思う。

会話の中であれば構造として完成するので。

 

ただ、メニュー名としては違和感があるなっていうのがワタシの感覚。

今日のメニューは「ジャガイモを炒めて」です、はオカシイ。

でもお店で「ジャガイモを炒めてください」と注文することは可能。

そんなイメージです。

 

ちなみに今日は妻がパリップをキラタで作ってくれました。

油を入れてますのでテルダーラでもある。